『428〜封鎖された渋谷で〜』が異常に面白かった。

最近では、めっきり信用を落としているファ○通クロスレビューで、40点満点を取った快作だったが、これは正当な評価だったと頷かざるを得ない作品。

10前にサターンで発売された『街』のように、複数の主人公の物語が同時進行していく方式だが、『街』ではそれぞれの主人公独自の物語が進行していくなか、ほんの少しの接点をザッピングしていたのに対して、今回の『428』は、何の接点もなかった主人公たちが、それぞれ別々の事情や事件に向かっていたのに、それらがやがて、ひとつの大きなうねりへと集約して行くというもの。

ザッピングひとつ取ってもよく考えられていて、プレイ中もずっと「ここでこう繋がるのか!」とか「あの選択肢がこういう結果になるのか!」と唸らされてばかりだった。
各主人公の物語も良くできていて、最初はコミカルなノリやクセのあるキャラクターに魅せられて、そして中盤では徐々に明らかになってくる事件の大きさと多くの謎に引き込まれ、終盤では主人公たちが己の役割を全うせんと奮闘する姿と解き明かされていく謎と真相に感嘆し、気が付けばエンディングを迎えていた。

システム自体は、午前10時から午後8時までの一日を、1時間毎に一つの「章」のように区切ったもの。プロデューサーの中村光一曰く、
「4月28日に起こった十時間の出来事を描く」、「『24 -TWENTY FOUR-』(テレビドラマ)のようなものが作りたかった」
とのこと。(wiki)
しかし私としては、複雑に絡まりあったそれぞれの物語が解きほぐされ、終盤に向けて集約していく際に感じた、このとてつもないカタルシスはむしろ、三谷幸喜監督の映画『THE 有頂天ホテル』に通ずるものがあると思った。

惜しむらくは売れ行き。
ユーザー評価・満足度ともに、サウンドノベルの枠を超え、他の人気ジャンルの大作・名作と比較しても劣らないほど高い数値を叩き出しているにも関わらずの低空飛行。
PS3PSPに移植されたが、どこまで売上を伸ばせるか……。

サウンドノベルというジャンル的に、ユーザー数が少ない(と思う)うえ、その少ないサウンドノベルユーザー自体、「実写映像」であることで敬遠気味であるらしい。おまいら二次元しか興味ないのかよ。大沢ひとみ役の近野成美とか、遠藤鈴音役の小林涼子とかマジ可愛いのに。眺めてるだけで幸せな気分になれるレベルの美少女だと思う。

総合すると、『街』のような作品全体に漂うB級臭さがなくなり、役者もシナリオも洗練され、かなり大衆向けに出来上がっていると思う。
というより、この珠玉のエンターテイメント作品の素晴らしさが、「サウンドノベルだから」「ゲームだから」という理由でほんの一部の人にしか伝わっていないことが悔しくてしょうがない。
いっそ映画化……は尺の長さから無理だろうから、ドラマ化出来ないかなぁと願うところ。
作中での時間経過は10時間なんだから、『24』みたいに1時間1話形式で最終章をスペシャル枠で組めばちょうど1クールで切りが良いかと。……無理か。