書籍化
web上で小説を書いてるような人にとって、その作品が書籍化されて作家デビュー! というのは一つの目標というか夢なのだろうが、それはやはりweb上で公開して批評に耐え、糧とし、物語をきちんと完結させる。そうやって身につけた力でもって、しかるべき賞なりに応募し、作家デビューを勝ち取るのが正しい道筋だと思うんだ。
しかしながら、有名レーベルから出版されてる某生徒会の日常的な話や某仮想現実RPGものや、某最強系主人公の魔法学園ものの人気ぶりに、web小説出身作家の力に気付いたのか、はたまた二匹目のドジョウを狙ったのか、最近とあるレーベルの青田刈りが目に余る。某小説投稿サイト上で人気の作品が、どんどん書籍化されているのだ。どこのα警察や英雄文庫とは言わないが。
人気作を編集者が吟味して、これならいける! という判断のもとで書籍化するならまだしも、どうにも「手当たり次第」感が拭えないラインナップばかり。
確かにランキング上位だし、俺も好きな作品だけど、正直金を取れるレベルの文章じゃないよね? という作品まで書籍化され、結果評価はガタガタ。無料で読めるweb版と違って、金を払って買っている読者の批評には容赦がないからだ。
作者はweb上で人気を得て、書籍化されて意気揚々だっただろうに、酷評の嵐の前で果たして続きを書くモチベーションが保てるのか。
また、web小説 はプロットも無く分量も気にせず、筆の赴くままに書き綴って(指の赴くままタイピング?)いる作品も多い。
そういった作品を書籍化する場合、1冊の区切りが中途半端になるため、とってつけたような山場を加筆しているが、文字通り「とってつけた山場」なため、作品全体に渡っての伏線など当然あり得なく、読者としても、読んでいて唐突感に見舞われることがしばしば。
書籍化するにしても、分量だの起承転結だのをちゃんと意識して書いてる作品を選ぶべきだろう。
ついでにいうと、完結した作品の書籍化ならまだしも、連載途中の作品の書籍化もやめて欲しい。大抵の場合、書籍化が決まると連載が止まり、書籍版に注力することになるが、もし書籍版が打ち切られても、webで連載再開――なんてことは滅多にないだろう。続きを書きたかったであろう作者、続きを楽しみにしていた読者、双方にとって不幸な結末しか浮かんでこない。
出版側からすれば、数打ちゃ当たると言わんばかりにちょっと人気の出た作品を書籍化していけば、そのうち何作かはそれなりに売れるだろうと思っているのかもしれないが、もう少し書籍化する作品を吟味して欲しい。
同人じゃないんだから、せめて基本的な文章作法くらい守られてる作品を選ぼうよ。 よほど世界観や設定が面白い、光る物があるような場合なら別だけどさ……出版に携わる者としての矜恃を持って。
ということで、散々web小説の書籍化に否定的なことを言いつつも、今楽しみにしているのがこちら。
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか (GA文庫)
- 作者: 大森藤ノ,ヤスダスズヒト
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